夕方、部屋の隅から羽アリがわらわらと出てきた。窓の桟に羽が散らばっている。そんな場面に出くわしたら、誰でも慌てると思います。
先にやることを言っておきます。殺虫スプレーは使わない。穴を塞がない。掃除機で吸って、数匹だけ残して、出た場所を記録する。これだけです。なぜスプレーがダメなのか、不思議に思うかもしれません。床下を見てきた施工者の立場から、理由も含めて順に説明します。
この記事でわかること
- 羽アリが出たときのNG行動3つ(スプレー・塞ぐ・放置)
- 正しい応急処置の3手順(吸う・残す・記録する)
- シロアリとクロアリの羽アリの見分け方
まず確認|シロアリの羽アリか、黒アリの羽アリか
羽アリには2種類あります。シロアリの羽アリと、黒アリ(クロアリ)の羽アリ。見た目が似ているので、ここでよく混同されます。
見分けるポイントは3つです。
| 見るところ | シロアリの羽アリ | 黒アリの羽アリ |
|---|---|---|
| 触角 | まっすぐで数珠状 | くの字に曲がる |
| 胴体 | 寸胴でくびれがない | 腰がくびれている |
| 羽 | 4枚ともほぼ同じ大きさ | 前の羽が大きく後ろが小さい |
覚え方はシンプルで、「寸胴+羽の大きさが揃っている」ならシロアリ側と考えてください。黒アリの羽アリなら、家の木材を食べる心配は基本的にありません。とはいえ飛んでいる虫を肉眼で判定するのは難しいので、ここで無理に断定しなくて大丈夫です。後述するサンプルを残しておけば、点検のときに確実に分かります。
より詳しい見分け方は「シロアリの種類と見分け方ガイド」にまとめてあります。
やってはいけないNG行動3つ
シロアリの羽アリだったかもしれない。そう思ったときに、良かれと思ってやりがちな行動が3つあります。どれも点検する側からすると「やらないでほしかった」となるものです。
NG① 市販の殺虫スプレーを発生源に噴射する
一番多いのがこれです。気持ちはよく分かります。目の前の虫を何とかしたいですから。
ただ、スプレーで駆除できるのは目に見えている羽アリだけです。シロアリは刺激に敏感な生き物で、薬剤の刺激を受けると、集団が壁の中や床下のさらに奥へと移動してしまいます。そうなると、どこに本体がいるのかをつかむのが難しくなる。点検に入ったとき、被害の入口が分からなくなっているケースを実際に見てきました。
NG② 出てきた穴をテープやパテで塞ぐ
羽アリが出てきた隙間をガムテープで塞ぐ。これも根本の解決にはなりません。出口を失ったシロアリは、別の場所に新しい出口を作るだけです。しかも塞いだ場所は「どこから出たか」という大事な手がかりでもあるので、覆ってしまうと調査の助けになる情報が減ります。
塞ぐより、そのまま写真に残すほうがずっと役に立ちます。
NG③ いなくなったからと放置する
羽アリの群飛(一斉に飛び立つこと)は、数時間から1日ほどで収まります。翌朝には羽が落ちているだけで、静かなものです。
ここで「終わった」と思って忘れてしまうのが、3つ目のNGです。飛び立った羽アリは巣の一部にすぎず、巣そのものは家のどこかに残っている可能性があります。今すぐ何かが起きるわけではありませんが、羽アリの発生は、見えない場所の状態を一度確認すべきサインです。慌てなくていい。ただ、なかったことにもしない。その中間が正解です。
正しい応急処置|3つの手順
では何をすればいいか。道具は掃除機とビニール袋、あとはスマホがあれば足ります。
手順1 掃除機で吸い取る
目の前の羽アリは、掃除機で吸い取ってください。薬剤を使わないので、残りの集団を刺激して散らしてしまう心配がありません。地味ですが、これが一番確実です。紙パック式なら、吸ったあとパックごと袋に入れて捨てれば済みます。
手順2 数匹をサンプルとして残す
全部吸い切る前に、数匹だけビニール袋に入れるか、セロハンテープで貼り付けて取っておいてください。つぶれていても構いません。
これがあると、点検に入る側は種類の特定がすぐにできます。シロアリか黒アリか、シロアリならどの種類か。それによって調べるべき場所も変わってくるので、サンプルが一つあるだけで話が早くなります。
手順3 「どこから・いつ・どれくらい」を記録する
最後に、スマホでいいので記録を残してください。
- どこから出たか(玄関の框、浴室のドア枠、窓のまわり、など)
- 何時ごろだったか
- どれくらいの量だったか(数匹なのか、数十匹以上なのか)
発生場所の引きの写真と寄りの写真が1枚ずつあれば十分です。日付入りの記録は、点検のときに「いつから・どこで」を判断する材料になります。私たちが施工に入る際、着工前・施工中・完了の写真付き報告書を標準でお渡ししているのも同じ理由で、見えない場所のことは記録で残すしかないからです。
羽アリが出る時期と種類の目安
参考までに、発生時期からもある程度の見当がつきます。
- 4月〜5月の昼間に飛ぶことが多いのがヤマトシロアリ
- 6月〜7月の夜、灯りに集まるのがイエシロアリ
どちらの場合も、やるべき応急処置は同じです。時期と時間帯もメモに添えておくと、種類を推測する手がかりが一つ増えます。
まとめ|吸って、残して、記録して、窓口へ
羽アリが出たときの対応を一行にすると、「スプレーせず、塞がず、掃除機で吸って、サンプルと記録を残す」です。羽アリ自体は数時間でいなくなりますが、それで解決したわけではなく、床下や壁の中の状態を一度確認しておきたいサインではあります。慌てる必要はありません。記録さえ残っていれば、点検は落ち着いてからで間に合います。
なお、建売住宅にお住まいの方の場合、点検・お見積りの窓口は、お住まいの元請け(購入元)になります。残しておいたサンプルと写真を手元に、まずは元請けに相談してみてください。
よくある質問
羽アリに殺虫スプレーをかけてもいいですか?
避けてください。駆除できるのは見えている羽アリだけで、薬剤の刺激で集団が壁の中や床下の奥へ散り、状況がつかみにくくなります。掃除機で吸い取るのが正解です。
羽アリがいなくなったら解決したということですか?
群飛は数時間〜1日で収まりますが、飛び立った羽アリは巣の一部にすぎません。巣が家のどこかに残っている可能性があるため、見えない場所の状態を一度確認すべきサインです。
シロアリかクロアリか分からないときはどうすればいいですか?
数匹をサンプルとしてビニール袋やテープで残し、発生場所の写真を撮っておけば、点検のときに確実に特定できます。ご自身で無理に断定する必要はありません。
この記事を書いた人|ホームキーパー施工チーム
年間約4,000件の建売住宅の床下と排水管を点検・施工する、建物ケア専門の施工チーム。しろあり防除施工士が在籍し、公益社団法人 日本しろあり対策協会の認定薬剤を使用。着工前・施工中・完了の写真付き完了報告書を標準でお渡ししています。建物ケアという考え方 →